100g1,060円のステーキ肉に欲情する日
突然ですが、この写真を見ていただきたい
どうだろう、このサシ。
とんでもなく「セクシー」じゃない????
セクシーダイナマイト!!!!!!
この極上の肉を前にして冷静になれます?????なれないですよね!?!?!?!?
興奮してきちゃったな…
所詮は人間も獣に過ぎないんだ…!
だってこの脂でっせ!!!
ヨダレが止まりませんわぁ………
韓国映画界の暴力装置、マ・ドンソクの平手打ちもかくやというほどの破壊的な食欲の衝動が僕を襲う。
が、我慢できねぇよぉ…兄貴ぃ、自分、「焼き」いいっすか…?
ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
こんなにもセンシティブな音、聞いたことねぇよ!!肉の焼ける音ってこっっんなに扇情的だったけ?お肉がフライパンでドスケベオーケストラや♡♡♡♡
なんで僕が肉相手にこんなに興奮しているかというと、この肉、高い。高いんです。
普段の食生活では、およそ僕の体内には吸収されるはずもない100g1060円もする牛もも肉なのだ。
欲情でもしなけりゃやってられない。
休日の散歩中、近所の精肉店を横切って、ショーウィンドウを横目でチラリと見た時、僕は釘付けになった。
とんでもなくでかい極太な肉の塊がそこに鎮座していたのだ。
何だ!?あの肉は!?
う、美味そう…めっちゃ美味そうですやんけ…
神々しいぜ…御光、差してない?
コバエホイホイに吸い寄せられるコバエの如く精肉店に電撃入店した。
早速、目当ての肉塊、牛もも肉の値段を見る。
…100グラムで1060円か…買えなくない値段だな…
ご飯にのっけたらさぞ美味いに違いない…
この金額なら吉野家で腹一杯食べることもできるが、そろそろ大人の階段上っちゃいましょうか…!
よーし!次のステージへいっちゃうか!いっちゃうぞ僕は!!やるぜ!!!!
満を持して店主に告げるー-。
「この牛もも肉、100グラムください」
「えっ?100グラム?100グラムだとすごく薄いよ」
あっ薄いんですか!?!?薄い!!??そっか!?!?そうだよね!?!?100グラム単位で売ってるのに!?そうなんだ!!!!!!ごめんなさい!!!!!!は、恥ずかしい…
店主から「薄い」というカウンターを喰らい、僕はテンパった。はちゃめちゃにテンパった。あんなに極太な肉の塊でも100グラムは薄いんだ〜あんまり100グラムの大きさを認識してなかったのがいけなかったな〜どうしよう!?!?!?
「じゃ、じゃあ300グラムください!」
咄嗟に300という数字が口から出た。
己の財布の中身を全く考慮していないその数字は僕を大変戦慄させた。
…金、持ってましたっけ?????
なんせ散歩の最中なのだ。あんまり持ち合わせはない。
店主は既に極太肉塊に包丁を入れ始めている。
家に財布取りに戻りRUNが頭をかすめる。瞬時に「ちょっと持ち合わせなくって~へへへ、すぐに取ってきますぅ」と作り笑いを浮かべ、店主に背を向けた途端、真顔になり全力で走る僕の姿も脳内で再生された。絶対嫌だ。
後戻りはもう、出来ないーーー。
慌てて財布を確認すると、小銭をかき集めてギリギリ3240円入っていた。
僕にこんだけ冷や汗をかかすなんて、大したもんだぜ、僕ってやつは!!もう!!!!コラ!!!!このイタズラっ子♡
なんとか支払いを済ましたが、罪悪感が僕を苛む。
何もない、何でもない日に突然こんな馬鹿高い肉を買ってしまった。
せめて祝い事とかさぁ…給料日とかさぁ…
家で食べる肉が3000円越え!?は!?お前は豚こま肉とウインナーが友達だろうが!!!!!!!!!身の丈を考えろ!!!!!!!!!!
でもまあ仕方ない。買っちゃったんだから!買っちゃったんだからさあ!!!!食うしかないって…!!!
そして今、その罪悪感が背徳感に姿を変え、牛もも肉に興奮している。イケナイことをしている感覚がすごい…不倫、いつの時代も横行するわけだ…
焼き上がり、こんがりとした姿にお色直しした牛もも肉。
とんでもねぇ質量…これがムチムチってことなんだね…
ムチムチ過ぎてなんだかムカついてきちゃったよ…
あああああああああああああああ!!!!!!
なんで!?なんでこんなにレアなの!?ヒャアッ、肉汁が止まんないよぉ〜!!!H〜〜!!!!!!!
それじゃ、いっただきま〜す!!!!!!!!
んほぉぉおおおおお!!らめぇぇぇぇ!!!脂堪んないのぉ〜〜〜〜!!!!!
3切れ目くらいまで食べた後、急に胃にガツンと来た。…脂、パワーがすごすぎる。こっちが引いちゃうほど出てくる。引くわ。贅沢な話だが、少し辛い。
確実に美味いんだけどな…あれ、おかしいな、ついでに焼いてたウィンナーのが美味くない?
ウインナー、ずっとそばにいてくれたもんな…素朴な奴だけど、俺、お前が一番かもしれない…あの、幼馴染的な?
牛もも肉も好きだけど、持て余す。豊満すぎるから…。あいつとはあくまで遊びなんだ!ウインナー、俺はお前とは添い遂げたいんだぜ…
………とりあえず両方、全部食わなきゃ…。
食後、当然のように胸やけ、胃もたれが起きた。食いすぎた。ウインナー、お前も余計だったか…
牛もも肉は教えてくれた。突然高いお肉を300グラムも買うべきものではないことを。あと、付け合わせにウインナーを焼くな。
体がついていかない。300グラム、多い。100グラムでよかった。「薄くても大丈夫です!」と言い切る勇気が僕にあれば….
急速に思考が後悔に染められていく。食事にも賢者タイムってあるんすかね
とりあえずこの日の夜はお茶漬けでした。
さっぱりしたご飯、最高〜〜〜〜〜〜!僕、お茶漬けと結婚しま~す!!!!